3次元として立体感のあるミックスの作り方を考えよう〜横の広がり編

”空間を目一杯使って、左右に大きく広がったミックスを意識しなさい”

私も、何度も言われたことがあります

そこで言われた通りのステレオ系エフェクターで目一杯広げてみたのに、担当者には全然広がってないけどちゃんとやったの?と言われてしまったことは、ありませんでしょうか

それには訳があるのです

これから一緒に、考えてみましょう

横の広がり、これは簡単です

大体、パンと呼ばれる、音を左右にズラすことのできる機能が、作曲ソフトについています

まずは、これを使えば良いのです

これは、右からギターを聴かせて、左にベースを配置したいなあ、と言うときに使うものです

ただし、バンドのミックスにおいて、ギターのパンを限界まで左右に振ってしまうと、イヤホンで聞いたときに頭の真横でギターが鳴っているような感覚になります

スピーカーで聴いた場合と、イヤホンで聴いた場合の情景に大きく差が出ないようにしましょう

また、一つのトラックでのステレオ感の広がりが欲しい時は、フェイザーやフランジャーといった、揺らぎ系エフェクトを使用するのが良いでしょう

ただしこれらのエフェクトは、サウンドの雰囲気がガラッと変わってしまいますので、そのことを踏まえて、適切に利用しましょう

いいフレーズができた、タッチ、質感もいい、そんな雰囲気を変えずに、左右の広がりが欲しい時はこういうエフェクトが良いでしょう 

widthのつまみで、広がり幅を調整します

izotope imagerなど、このような機能のエフェクターは、たくさん出回っています

無料配布されているwiderというエフェクトも有効です

https://polyversemusic.com/products/wider/

冒頭で書いた、左右に広げようとしたときに使ったエフェクターがこれでした

つまみをひねれば、200%、400%と広げることができます

そして、ここに大きな落とし穴があったのです

一体どういうことでしょうか

左右に音を広げるということは、左右のスピーカーから出る周波数をずらす、と言うことです

例えば右のスピーカーからピアノ、左からギターが聴こえてきたら、左右全く違う音なので、私たちは左右の存在を意識して、はっきり感じることができるでしょう

でも、左からも、右からも、同じピアノ、同じ演奏が聴こえてきたら、左右の差がないので、わからなくなってしまって、しまいには、真ん中にピアノがあるように感じてしまうのです

これらのステレオ化エフェクターは、この左右差を利用します

左右から同じピアノが出るとき、片方、例えば左だけ、ちょっと周波数を変化させて、同じ演奏に聴こえるけれども、微妙に違う、そのような状態にすると、私たちの素晴らしい耳が、左右差を立ち所に感知して、左右の広がりを感じるようになるのです

左右に差があれば良いのです

というわけで、このエフェクトでピアノのトラックを目一杯空間を広げて、担当者に持って行ったわけですが、一体なにがまずかったのでしょうか

単にピアノをステレオ化すると、ピアノそのものが左右にノペーっと広がって感じることになります

私は、このように、ピアノそのものを単純に、ステレオ化していましたので、担当者に叱られてしまったのです

ピアノの音は左右に広がってはいるものの、そこから連想される情景は、実に奇妙な、横にベローっと長いピアノが、ただ鳴っているだけ

空間の広がりの伝え方が、まずかったのです

担当者のイメージしていたピアノ
dj p のミックスしたピアノ

こういったエフェクターは、そのことを理解して、例えば曲のブレイク手前の時にシンセサイザーの音をブワッと広げてアクセントにしたい、というような、適切な場面で使ってこそ、威力を発揮するのです

ですから、今回のようにピアノを鳴らしたい、広い空間を演出したい、という時は、ちょっと複雑になりますけれども、このようにセンドトラックのリバーブを2種類、使ってみればよかったのです

こうすれば真ん中にピアノが鳴っていて、左右の残響音に差があるので、広い空間、例えば大聖堂とか、ホテルの大きいロビーを想像できるサウンドとなります

オーディオトラックのピアノがモノラルで鳴りつつ、センドトラックのリバーブが左右から鳴るためです

もちろんリバーブはそもそも空間の広がりを作ってくれますから、わざわざ2種類使わなくても良い、むしろ1種類の方が、背後の空間が統一しますから良いののですが、今回は左右差について考えておりますから、こうなります

やはりこういう実験によって、強烈な、思わぬサウンドが得られることもありますので、皆さんも、色々試してみましょう

注意点として、最終的な再生機器、今やステレオどころが、5個、10個とスピーカーを使う、サラウンドの時代ではありますが、モノラルで再生する場合、スピーカー1個しかない、小さいラジオとか、そんな機器で再生するときは、左右の周波数を足し算して、一つにまとめてしまいます

ですから周波数が左右反転している部分はお互いの周波数が打ち消しあって、音が消えてしまいます

ある程度は仕方がないとは思いますが、曲の雰囲気を大きく損なわないよう、左右差をうまく調整しましょう

最後に説明した、リバーブを使った方法、これは非常に複雑な波形になりますので、反転部分を無視できることが大いにあります

そういった意味においても、非常に有効な手段であります

ステレオ感、皆さんもぜひ、色々試してみてはいかがでしょうか

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