時代と共に人々の感覚も変化し、それに伴って音楽も変わります
大昔、人々には立体を表現する、という発想そのものがありませんでした
これは1333年のシモーネさんの絵です
人物、背景ともに平面に、均等に描かれています
これが100年くらい後になると、立体的になってきます
1400年初めの、ランブール兄弟の絵です
奥行きが出てきました
音楽も変化してゆきます
初めは、ゴスペルみたいな歌を並んで歌うだけだったものが、ハーモニーを作ってみたり、コーラス、リズムを、、となってきます
そして、現代です
人類の叡智が生んだエフェクター
リバーヴ
80年代あたりはどの曲も結構リバーブがかかっているようです
90年から2000年ごろになるとあんまりリバーブ感がない曲が増えてきます
私が作曲を始めた2000年ごろ、作曲ソフトについているリバーブは、あまり品質がよくありませんでした
リバーブはすごくパソコンのメモリを消費するので、残響音の粒子が荒く、耳障りなので、あまりガッツリ使うことはなかった記憶があります
いいリバーヴは、高級でした
当時の私には、とても手が出るものではありませんでした
近年は、とても品質が良くなってきています
特にボーカルに深いリバーブをかけて、奥行きを強調する曲が多いようです
とにかく深くかけて、奥行きを強調するのがトレンドです
このKelelaさんの曲は、とても参考になります
リバーヴとディレイ、語尾の部分だけかけてみたり、コーラスの部分を横から聴こえるようにして、真ん中のメインボーカルを包み込むように処理しています
リズムの部分に展開が少ないので、普通にずっとリバーブだけ掛けていたのでは、単調になってしまいます
そのため、ボーカルの構成を複雑にして、バランスをとっているのではないでしょうか
videoも、シンプルなカプセル(リズム)の中で歌い手がクネクネ(ボーカルの変化)といった関連を考えると、曲を上手に表現しています
ドラムにもリバーブをかけてもいいのですが、キックなどの低音部の雰囲気に気をつけましょう
リバーヴによる残響音が全くなく、ドライ(乾いた)な時、私たちはその音が近くにあるように感じます
これをうまく利用して、自分のキャラを作り上げたのが、ビリーアイリッシュでしょう
ボーカルを録音するときに、なるべくマイクのそばで、コソコソ声で録音します
これでさらに近くで歌っているように聴かせて、手前の空間を強調することで立体感を演出する、逆転の発想がうまくいきました
そのため、伴奏の方が後ろにあるようになっていて、スナップに短いディレイ、シンセに深めのリバーブが使われて、奥行きを表しています
いずれにしても、特にコンセプトで真っ平らに作る必要がない限り、音の前後関係を意識して、臨場感を演出することが求められます
昔はハイハットに僅かにリバーブをかけて、リアルさを出せ、といった小技もありましたが、最近はどうでしょうか
時代と共に、手法も変わってきます
80年代はリバーブを多用していましたが、それでも、”あまり使いすぎると空間が風呂屋みたくなるから気をつけろ、と言われました
今は風呂屋どころではありません
宇宙空間ぐらい広がっているといっても、過言ではありません
今後、企業各社が仮想空間への投資が進むことによって、ドルビーアトモスと言うような、立体オーディオ技術が求められるようになるかもしれません
非常にたくさんの、スピーカーを使って製作します
こうなってくると製作手法も大きく変わってきます
リバーブやディレイが、なくなることはありませんが、この状況では音をどのスピーカーから鳴らせばよいかを決めれば立体を表現できます
例えばバンドの演奏が外で行われている、演奏には特にリバーブをかけずに、効果音、例えば遠くでミサイルが落ちてきた、みたいな音にはリバーブをかける、みたいな情景を考えたり
自分がボーカルになっているように、周りから伴奏が聴こえる(近い)そして観客の声援が聴こえる(遠い)ので、観客の声援にはホール系のリバーブ、バンドの伴奏には、ステージ特有のやまびこ系のリバーブを使う、などが考えられます
大きな会場でライブをした人は分かると思いますが、スピーカーの向きが観客側ですから、演奏の音が会場の壁に反響して、リアルタイムで演奏している音と時差ができてしまい、演奏がうまく聴き取れなくなってしまいます
それを解決するために、ステージ側に向けたモニタースピーカーがあります
今までは、あまり考えることのなかった状況を、ミキシングで表現することになるかもしれません
このような未来に向けて、投資するかどうか、映画だけでなく、音楽そのものにも影響があるのかどうか、判断が分かれると思います
皆さんは、どのようにお考えになりますでしょうか
関連記事
コメントを残す